温度計は26度を指していたが、
その部屋は暑かった。
男は、それでも文章を書いていた。
彼は今年で25になったことを負担に考えていた。
彼は、自分の望みがわからなかった。
26-27とこのまま釣瓶落としの様に歳をとることは
気付いていたが、それに対する準備まで手が回っていなかった。
誰が為に鐘は鳴るの曲が、その、深夜一時の部屋には
流れていた。
男は、このCDも両親に返さないとなと思っていた。
ケースは割れていたが、ケースの替えはできるだろうと思っていた。
明日は散髪に行く予定だった。
男は意味も無く笑った。ニッと。
最近の癖だった。
毎日を、時間を、消費せずに使いたいと
思っていたが、そのために何をすべきかが
わからなかった。
長針はいつのまにか四を指し
ていた。もう寝ようと男は思った。
―6/12(金)