「お前のアイデアはそんなもんか?」

斜め前に座っていた、女子大生が、乗り込んで、隣に座った

男性を見て、髪をかき上げ、上目使いに彼を見た。

それをフイに見てしまった彼は、当たり前の様に、自分より

格好良い人は、居るよな、と

改めて気付かされるのだった。

彼はその日も誰とも会話を交わさず、

一人で映画を観た。

自分でもこのままではやっかいなことになると思っていた。

本気で、そろそろ友人に、誰か紹介してもらお

うかと考えていた。

その一秒後にはしかし、彼はそのバカな考えを打ち

消すのだった。

見えてない。彼はそう思った。彼は思った、閉塞感が濃い

と。昨年よりも。正に、彼は今。霧の中に居た。

また、彼は、自分が立ち止まっていることも

感じていた。もう何百回と同じ状況だった。
同じ質問、どうすれば良い?を繰り返し続け

た彼は、最近もう、その質問を発しなくなっていた。
何も考えない方がマシだと。思っているのだ。
目先の楽しさを感じた方が楽で自然じゃないかと。
彼は見失っていた。ヤケになっていた。―10/17(土)

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